浮き島レコード

景色だけが変わり未来は過去になる

雑想3

アレサ・フランクリンの死後いろんな人がそれぞれに思い出や自分のアレサ観を語っていましたが、そこで面白かったのは「シンガーソングライターとしてのアレサ」というイメージです。歌手としての名声があまりに高いために作曲家というイメージは薄いように思いますが「Don’t Let Me Lose This Dream」も「Spirit in the Dark」も「Day Dreaming」も彼女の自作曲なんですね。これはもう“天才的な作曲家”と言っていいレベルなのではないか?と思ってしまいます。

同時に、70年代の「ニュー・ソウル」の担い手たち、自ら作曲し自ら歌うミュージシャンたちとアレサとの距離がそれほど遠くないことに気づかされます。なんとなくダニー・ハサウェイキャロル・キングをカバーするのとアレサがカバーするのとでは距離感が違うと思っていましたが(アレサの場合、例えばオーティス・レディングが「デイ・トリッパー」を歌うのに近いものを感じていました。つまり “レパートリー”に近いものを)意外とそうでもないのかもしれないと思えてきました。思えば『ロバータ・フラック&ダニー・ハサウェイ』と『ヤング、ギフテッド&ブラック』は発表年も同じだし参加ミュージシャンもかなり重なるのに、ニュー・ソウルに関わったミュージシャンとして彼女を見たことがなかったのは迂闊でした。

しかし、実際に彼女が残したレコードを聴くと、そのような文脈づけのようなものがすぐにどうでもよくなってしまうのも確かです。『レディ・ソウル』に漲るパワー、『ライヴ・アット・ザ・フィルモア・ウェスト』の突き抜けた歌唱、『ヤング、ギフテッド&ブラック』のしなやかなグルーヴなど、すべて素晴らしいとしか思えないのですが、何と言っても『貴方だけを愛して』の甘さの残ったトーンが好きで、このアルバムでしか聴けない彼女の声があると感じます。(特に「Soul Serenade」「Don’t Let Me Lose This Dream」「Baby, Baby, Baby」の流れが好きです)