ロックンロールを聴きなおすこと

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ボ・ディドリー、チャック・ベリー、リトル・リチャード、バディ・ホリーエディ・コクラン…彼らが残した3分間のロックンロールを聴くたびに、コンパクトな形式のなかに詰め込まれたアイデアに驚かされる。

 

例えば、リトル・リチャード「グッド・ゴーリー・ミス・モーリー」のほとんど「ヒップホップ的」なドラムブレイク。バディ・ホリー「エブリデイ」のきわめてミニマルな曲構成(伴奏はほとんどベースとハンドクラップ、鉄琴だけ!)、エディ・コクラン「サムシン・エルス」の「インダストリアル的」とまでいえる凶暴なシンバルの連打。これらは今でも新鮮で、未来のポップ・ミュージックにつながる可能性を秘めている。

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「ロックンロールといえば8ビート」というのは単純すぎる話で、そのリズムの土台にはさまざまな音楽の影響やそれぞれの「なまり」がある。リトル・リチャードのバック・ミュージシャンはニューオーリンズの腕利きジャズプレイヤーであり、プロフェッサー・ロングヘア経由のシンコペーションのきいた演奏を繰り出すことができた。ニューオーリンズという土地はカリブ音楽の影響が多い地域で、同地出身のファッツ・ドミノ、ロイド・プライス、リー・ドーシーらの楽曲からはポリリズミックなキューバン・リズムの影響が感じられる。

 

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ルイジアナ出身のボ・ディドリーにもカリブ音楽の影響がある。ボ・ディドリー・ビートがキューバのソン・クラーベと類似したリズムを持っていることは有名である。ボ・ディドリー・ビートを取り入れた「ノット・フェイド・アウェイ」を歌ったバディ・ホリーニューメキシコ出身であり、テックス・メックスと呼ばれるメキシコ系音楽の影響を受けている。「ラ・バンバ」と「ツイスト・アンド・シャウト」が酷似していることなど、ロックンロールとカリブ/ラテン音楽との関わりは深いのである。

 


おそらく、それまでジャズやカントリーやラテンをやっていたミュージシャンが50年代に一斉にロックンロール(黒人音楽の一種としての)に参入する中で、彼らの背景にある音楽性が持ち込まれ、ゴッタ煮状態となったのではないか。こうしてみるとロックンロールはきわめて豊かな音楽であり、(特にリズム面から)聴きなおすことで新たな発見があるのではないかと思う。その中には現在のR&Bやヒップホップなどにつながるものもたくさん含まれているのではないか。

 

(例えばこのデイブ・バーソロミュー「ザ・モンキー」は、T.Rexの'Get It On'の元ネタであると同時に、Jディラの「ヨレた」ビートにつながるものがあるように思う)





 <参考プレイリスト>

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<参照した文献>

大和田俊之『アメリ音楽史

大和田俊之・長谷川町蔵『文化系のためのヒップホップ入門』