Paper Planes

景色だけが変わり未来は過去になる

2009年洋楽シーン・極私的回想

 

2009年「洋楽」の思い出バナシをさせていただく。この年に、現在につながるいろいろな萌芽が生まれていたと感じるためである。個人的には、4月に高校に入学して行動範囲が広まり、これまでよりもずっとたくさんライヴを見たりCDを買ったりした年であった。自分の一生で最も多く・深く音楽に触れた年だったと思う。

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個人的な2009年ベスト・アルバムはThe XXの“The XX”だった。(さいきん再結成したということで・・・)国内では相対性理論の『ハイファイ新書』がお気に入りだった。しかし『スヌーザー』『クロスビート』はAnimal CollectiveThe Horrorsの新作の方を高く評価していた。FMラジオからはLily Allenの“The Fear”や、Franz Ferdinandの“Ulysses”などがよく流れていた。西海岸からGirlsがデビューしたのもこの年だが、彼らの“Big Bad Means Motherfucker”をはじめて深夜ラジオで聴いた時の事はよく覚えている。(スピーカーが壊れたかと思った)

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Lady Gagaが日本でも人気を集め、James Murphyは雑誌で「あれがアートだって?ふざけるな!」と啖呵を吐いていた。(翌年LCD Soundsystemは解散した。フジロックのラストライヴは素晴らしかった)カニエがオートチューンを使い始めた。(オートチューンを使うか否かは当時大きな問題だった)ビヨンセが傑作曲“Single Ladies”を出した。Black Eyed Peasが “Boom Boom Pow”でエレクトロに接近した。タワーレコードで試聴したWashed Out “Life Of Leisure”の斬新なサウンドには驚いた。(すぐ「チルウェイヴ」という名前で世界中に広まった)

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自分の思い出の範囲だけでこうして並べて書いてみても、現在も活躍している人と「どこへ行ってしまったんだろう?」という人とではっきりと明暗が分かれて面白い。たとえば、今は影も形もないが、当時はThe Libertinesの後追い的なイギリスのガレージ・バンドの人気が残っていた。(The ViewとかThe Enemyとか)僕もバリバリのロック少年だったので、わりにそういうもの中心に買っていた。 “The Tellers”というスウェーデンかなんかのリバティーンズ・フォロワーまで買っていたから相当である。

 

しかし今思えば、2009年もっとも重要だったのはイギリス出身の若いトラックメイカーたちのデビュー・躍進であったのだと思う。例えばグラスゴーからHudson Mohawkeが EP'Polyfork Dance'でデビューし、同年には傑作“Butter”をリリースした。同じくロンドンでJames Blakeがキャリアをスタートさせた。前述したようにJamie XXもThe XXの一員としてデビューした。いわゆる「プレイステーション世代」(ソニープレイステーションを用いてビートを作成していた世代)の若者達がダブステップ後のシーンに殴り込みをかけたのが2009年だったのだなと思う。彼らのようなイギリス出身の若手トラックメイカーとアメリカのヒップホップ/R&Bとの結びつきこそがテン年代の「音」を決めたと言っても過言ではないと思う。

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Hudson Mohawke-Butter

 

しかし恥ずかしながら、当時はまったくこの動きを理解していなかった。 “Butter”は『スヌーザー』の年間ランキングに入っていたが、その奇妙なジャケットから、「また奇を衒って変なの入れやがって…」としか思わなかったのは痛恨の極みである。Flying Lotusが大きくロック誌に取り上げられ始めたのも、Thom Yorkeが関わってからであったように思う。7年前にはロック・ファンとダンス/ヒップホップ・ファンの間の境界は今よりもはるかに広かった。そう思うと、2010年という早い時期にHudson Mohawkeをリミキサーとして起用したZAZEN BOYS/KIMONOSの向井秀徳はさすがである。(Kimonos/No Modern Animal:Hudson Mohawke Remix)

 

(2006年あたりに向井秀徳D’Angeloの“Voodoo”をSly & The Family Stoneの “There’s A Liot Goin’ On”と比較して絶賛していたのをよく覚えている。)

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そして最後に、2009年を語る上で欠かせないのがマイケル・ジャクソンの死である。(6月)そこから映画 ‘This Is It’ 公開などを経て、マイケルの評価は180度逆転した。当時を生きていた人間としては「キング・オブ・ポップ」の偉大さが見直されると同時に「ポップ」という言葉も徐々に肯定的なものに変化していったように思えるのだ。そう考えると、Daft Punkがディスコを掲げて復活したこと、Pitchforkがメインストリームの作品を積極的に取り上げ始めたこと、また“Uptown Funk”の大ヒットなど、2010年代の重要な事柄にも「キング・オブ・ポップ」がうっすらと影を落としているように思える今日この頃である。