レビュー:Kacy Hill『Simple, Sweet, And Smiling』

Kacy Hillの名前を最初に見たのはどこだっただろうか。モデル、バック・ダンサーなどを経て、2015年にはカニエ・ウェストのG.O.O.D. Musicに所属。トラヴィス・スコットやキッド・カディといったビッグ・アーティストにフィーチャリングされるほか、17年には…

サム・ゲンデル『Inga 2016』を聴く (2)

前回記事 前回記事からぼやぼやしている間に、フィジカル・オンリー・リリースだった本アルバムが配信で聴けるようになるという事件があった。 【DIGITAL RELEASE】11月27日に発売されるLP『Sam Gendel / inga2016』に先駆けて、なんと日本のみで本日からス…

レビュー:Nala Sinephro『Space 1.8』

2021年9月、25歳のハープ、シンセサイザー奏者Nala Sinephro(ナラ・シネフロ)はデビュー作『Space 1.8』をリリースした。発表後、ピッチフォークが“アンビエント・ジャズのランドマーク”として「Best New Music」を与えたほか、年末にはResident Adviserが…

サム・ゲンデル『Inga 2016』を聴く(1)

はじめに 折坂悠太との共演、ローリー・アンダーソン曲のリミックスなど、21年も終わりに近づくのにトピックの尽きないサム・ゲンデル。そんな彼の21年の仕事をまとめた「2021年のサム・ゲンデル」、キャリアを時系列順で俯瞰した「サム・ゲンデルとは誰か?…

サム・ゲンデルとは誰か?

まえがき 幼少期~南カリフォルニア大学へ 音楽活動開始~2016年 2017年 2018年 2019~2020年 プレイリスト ディスコグラフィ Inga Sam Gendel オリジナル・アルバム 編集盤 サウンドトラック with Sam WIlkes with Carlos Nino with Ethan Braun with Josia…

レビュー:Tirzah『Colourgrade』

『Devotion』(18年)の実験的なR&Bサウンドでメディアに注目されたロンドンのアーティスト、Tirzahの2ndアルバムがDominoよりリリースされた。長きにわたる共同制作者、Mica Leviをはじめロンドンのミュージシャン仲間を迎え、彼女自身の出産というパーソナ…

サウンド・マン自らの仕事を語る

グリン・ジョンズ著・新井崇嗣訳『サウンド・マン~大物プロデューサーが明かしたロック名盤の誕生秘話』シンコー、2016年。 ローリング・ストーンズ、エリック・クラプトン、イーグルス、ザ・フー、ビートルズ、クラッシュなどにかかわったエンジニア/プロ…

歓喜の歌

Wilco『Ode To Joy』 『Ode To Joy』制作にあたり、バンドのフロントマンであるジェフ・トゥイーディはリズムマシンを使ってドラム・トラックを打ち込み、そのうえでドラマーのグレン・コッチにこう伝えたという。「グレン、この曲で君はテクニックを見せつ…

2021年のサム・ゲンデル

0. まえがき 2021年に入ってから怒涛のペースでリリースを続けるサム・ゲンデル(Sam Gendel)。そのリリースをまとめたものがなかったので作ってみた。サムの場合、ソロ・ワークに加えて活発なコラボレーションがあり、そのコラボ相手の音楽性もジャズ、フ…

即興と編集

先日『イン・ア・サイレント・ウェイ』コンプリート・セッションの「Shhh/Peaceful」を聴いていてスタジオ盤との大きな違いに気が付いた。同曲はセッションで演奏されていた際には、明確なテーマ部を持っているということである。 マイルス、ハービー、ジョ…